「見学会の予約が減っている」「広告費を増やしても受注につながるか分からない」。工務店の集客が減少したとき、まず確認したいのは、反響数と営業プロセスのどこに変化が起きているかです。
資料請求への対応が遅れているのか、予約後に来場しないのか、それとも来場しても提案が進まないのか。原因によって、必要な施策は変わります。
本記事では、2026年7月の住宅業界調査を手掛かりに、初動・追客・営業引継ぎの改善方法を整理します。広告費を増やす判断も、現在の顧客情報からどこまで来場・受注を生み出せているかを把握したうえで行いましょう。
この記事の結論
- 集客減少時は、反響数と各段階の歩留まりを確認し、受注が減る原因を特定します。
- 調査では集客が減っても受注を維持・増加させた企業がありましたが、その理由を追客やツールの効果と断定することはできません。
- 初動の担当・期限、顧客状況別の案内、次回アクションを決め、対応漏れを減らします。
- 効果は来場数だけでなく、同じ顧客群の成約率、追加費用を含む投資効果、粗利まで確認します。
1.課題が発生する背景
調査が示すのは「集客減少企業の割合」
ビズ・クリエイションが2026年9月16日に公表した調査は、KengakuCloud導入企業157社を対象に、同年7月6日〜29日に実施したオンラインアンケートです。直近3カ月の集客・受注を前年同期と比較しています。
| 調査項目 | 回答割合 |
|---|---|
| 集客が減少した企業 | 52.2% |
| 受注が減少した企業 | 38.9% |
| 集客減少企業のうち、受注を維持・増加させた企業 | 37.8% |
| 集客が増加・横ばいだった企業のうち、受注を維持・増加させた企業 | 86.7% |
集客減少の回答割合は、2025年7月の44.5%、2026年1月の51.5%、同年7月の52.2%と推移しています。株式会社ビズ・クリエイションのプレスリリース
ただし、52.2%は集客人数の減少率ではありません。また、特定ツールの導入企業による回答であり、全国の工務店全体へそのまま当てはめることはできません。
受注維持の背景には、過去に獲得した顧客の成約、紹介案件、商品や地域の違いなども考えられます。公表結果だけでは、特定施策の効果や各社の成約率改善までは確認できません。経営上の示唆は、集客数と受注数をそれぞれ確認し、その間の工程を自社データで調べることです。
来場前の検討と、来場後の商談をつなぐ
同じ7月調査の追加発表では、情報収集の長期化を感じる企業が54.8%、来場者が事前にSNSやインターネットで詳しく調べていると回答した企業が83.4%でした。これらは住宅会社側の認識であり、消費者本人の行動を直接測った割合ではありません。株式会社ビズ・クリエイションのプレスリリース
この結果を踏まえた改善案は、顧客が事前に見た施工事例や関心テーマを接客に引き継ぐことです。「何に興味を持って来場するのか」が分かれば、当日に説明する内容や用意する資料を具体化できます。
2.最初に確認するKPI
営業歩留まりとは、各段階の顧客が次の段階へ進む割合です。次の流れを、共通の顧客IDで追跡します。
反響 → 初回対応 → 接続 → 来場予約 → 実来場 → 提案・見積 → 申込 → 成約
| KPI | 定義・計算方法 | 確認する課題 |
|---|---|---|
| 平均初動時間 | 反響受付から担当者の最初の連絡までの経過時間の平均 | 担当不在や割当遅れ |
| 初回対応率 | 担当者が初回連絡した顧客数 ÷ 反響数 × 100 | 未対応の残存 |
| 接続率 | 双方向の会話・返信が成立した顧客数 ÷ 初回連絡した顧客数 × 100 | 連絡方法・時間帯の不一致 |
| 来場予約率 | 予約した顧客数 ÷ 反響数 × 100 | 来場理由や案内内容の不足 |
| 予約からの来場率 | 実来場した顧客数 ÷ 予約した顧客数 × 100 | 日程変更・欠席への対応 |
| 反響からの来場率 | 実来場した顧客数 ÷ 反響数 × 100 | 来場前の工程全体 |
| 来場からの成約率 | 成約した顧客数 ÷ 実来場した顧客数 × 100 | 商品・価格・提案との適合 |
| 次回アクション設定率 | 次の行動と期限を設定済みの案件数 ÷ 対応継続中の案件数 × 100 | 担当者任せの放置 |
集計単位は重複を除いた顧客組数にそろえ、再来場を新規来場に含めないようにします。自動受付メールは担当者の初回連絡に含めず、初動時間と併せて未対応件数も表示してください。営業時間外を含む経過時間かどうかも統一します。
また、「今月の成約数÷今月の反響数」では、異なる顧客を比較する場合があります。施策評価では反響を獲得した月ごとに顧客をまとめ、同じ追跡期間で来場・成約を確認します。検討中の案件を早期に失敗と判定しないことも必要です。
広告費を増やさずに改善した場合の計算例
以下はシミュレーションです。改善前後それぞれで、1カ月に獲得した50組を各反響日から180日間追跡したと仮定します。1棟当たり粗利はマーケティング費用控除前の300万円、改善後の追加費用は当該顧客群に配賦するツール・運用費10万円とします。
| 項目 | 改善前 | 改善後 |
|---|---|---|
| 広告費 | 100万円 | 100万円 |
| 反響数 | 50組 | 50組 |
| 実来場数 | 10組 | 15組 |
| 成約数 | 1件 | 2件 |
| 反響からの来場率 | 20.0% | 30.0% |
| 来場からの成約率 | 10.0% | 約13.3% |
| 反響単価 | 2万円 | 2万円 |
| 来場単価 | 10万円 | 約6.7万円 |
| 成約単価 | 100万円 | 50万円 |
| 帰属粗利 | 300万円 | 600万円 |
| 追加費用を含むマーケティング費用 | 100万円 | 110万円 |
| 粗利ベースのマーケティング投資効果 | 200.0% | 約445.5% |
反響・来場・成約の各単価は、広告費をそれぞれの件数で割っています。粗利ベースの投資効果は、次の式です。
(帰属粗利-マーケティング費用)÷マーケティング費用×100
改善後は(600万円-110万円)÷110万円×100=約445.5%です。帰属粗利は二重計上を防ぎ、費用には必要な制作費・配信費・運用工数も含めます。この数値は会社全体の営業利益率ではなく、効果を保証するものでもありません。
なお、他条件が同じで反響が20%減る場合、同じ受注水準を目指すには全体の成約率を従来の1÷0.8=1.25倍にする必要があります。成約率4%なら5%という計算です。自社でその改善が見込めるかを確認し、新規集客への投資と比較します。
3.具体的な改善方法
反響から成約まで、落ちている段階に対応する
来場が減っていても、すべての会社で同じ施策が有効とは限りません。
- 反響数が減り、来場率は維持している場合: 商圏内の露出、広告の訴求、施工事例から問い合わせへの導線を見直します。
- 反響数は維持し、接続率が下がっている場合: 初動時間、希望連絡手段、電話をかける時間帯を確認します。
- 接続できても予約につながらない場合: 顧客が相談したい内容と、案内しているイベントの内容を照合します。
- 来場しても提案・成約が進まない場合: 希望予算、商品、土地条件、提案内容、競合との比較で停滞理由を調べます。
担当者別に比較するときも、流入元や担当件数、検討段階を確認します。成約率だけで営業担当者の能力を評価すると、配分や商品の問題を見落とします。
初動の担当と期限を決める
反響直後の自動受付では、資料の受取方法と担当者からの連絡予定を伝えます。そのうえで、人による初回対応の担当者、期限、不在時の代行者を設定します。
例えば「営業時間内は30分以内に初回連絡、営業時間外は翌営業日の午前中まで」とするのは運用ルールの一例です。業界標準や成果保証ではなく、自社の人員と顧客の希望に合わせて調整してください。
初回連絡では、すぐに来場を求める前に「土地探しと建物の比較、どちらを先に整理したいですか」など、次の提案に必要な質問をします。
建築時期・予算・土地状況で案内を変える
| 顧客の状況 | 案内する情報の例 | 次の行動 |
|---|---|---|
| 土地が決まっていない | 希望エリアでの土地と建物の総予算の考え方 | 土地条件を整理する相談 |
| 土地があり、建築を具体的に検討 | 敷地条件が近い施工事例や間取り | 図面・敷地資料を使った相談 |
| 予算面が不安 | 工事範囲と諸費用を分けた資金計画 | 総予算を確認する面談 |
| 建築時期が未定 | 家づくりの進め方、比較項目 | 希望する時期に状況確認 |
分からない項目は「未確認」と記録します。メールを開いただけで、予算や購入意欲を決めつけてはいけません。
休眠顧客には再相談する理由を用意する
過去に問い合わせた顧客へ再連絡する際は、前回の相談内容を起点にします。「ご希望に近い広さの見学会が決まりました」など、実際に案内できる情報を届けます。
休眠と失注も区別します。時期延期、土地未決定、予算不一致、他社契約では、必要な対応が異なります。連絡を望まない顧客は配信対象から除外し、追客中でも返信・予約・営業対応開始を把握したら一律の自動案内を止めます。
再活性化率は、一定期間内に再び双方向の会話が成立した顧客数を、再接触した休眠顧客数で割って確認します。その後の予約・来場まで追跡してください。
4.マーケティングと営業をつなぐ方法
マーケティングと営業で、反響数・来場数・成約数の定義と顧客IDをそろえます。共有項目には、流入元、関心を持った施工事例、予算の対象範囲、土地状況、希望時期、対応履歴、次回アクションを含めます。
| 役割 | 優先して確認すること | 判断・行動 |
|---|---|---|
| 経営者 | 成約単価、商品別の粗利、追加費用 | 投資先と人員配置を決める |
| 営業責任者・営業企画 | 初動、未対応、停滞、次回アクション | 担当調整と商談支援を行う |
| マーケティング責任者 | 流入元別の接続・来場・成約 | 広告やページの訴求を修正する |
マイホムの公式導入事例では、契約前から相談内容を記録し、担当者不在時の引継ぎや再来場時の対応に活用している運用が紹介されています。myhm.jp
自社でも「何を送ったか」に加え、「何が未解決か」を記録しましょう。例えば「共働き向けの家事動線に関心があり、土地と建物を合わせた予算に不安がある」と引き継げば、営業が準備する資料を具体化できます。
5.AI・CRM・LINEの活用
CRMは顧客情報や対応履歴を共有する仕組みです。まず、担当未設定、初動期限超過、次回予定なしの案件を把握できる状態にします。
AIには、問い合わせの分類、商談記録の要約、返信文案、停滞理由の整理を任せられます。ただし、元の記録とAIの推測を区別し、提案内容や送信文面は担当者が確認します。見積金額や住宅性能を根拠なく補完させない運用が必要です。
LINEやメールでは、顧客の希望する連絡手段を確認し、関心に合う情報を届けます。顧客IDの照合、配信停止情報の共有、担当者の連絡との重複防止を、利用サービスの対応範囲に合わせて設計します。
AIやツールを選ぶ際は、個人情報の利用目的、入力する情報の範囲、学習利用の設定、閲覧権限も確認してください。優先顧客を抽出する場合は、点数だけでなく「返信があった」「具体的な質問が届いた」などの根拠を担当者に示します。
6.実行手順
次の4週間は、運用を立ち上げるための計画例です。
- 1週目:現状をそろえる。 直近の反響を流入元・担当者・工程別に整理し、重複、未対応、検討中案件を確認します。
- 2週目:初動を整える。 担当者、対応期限、代行者、受付文面を決め、期限超過を毎日確認します。
- 3週目:追客を試す。 土地未決定や時期延期など、実際に多い顧客層から案内を作り、少数の案件で運用します。
- 4週目:結果と負担を確認する。 接続率、予約率、配信停止、担当者の作業時間を確認し、続ける施策を決めます。
成約率は自社の商談期間に合わせて継続確認します。4週間で契約が増えないことだけを理由に、施策の成否を判断しないようにしましょう。
7.失敗しやすいポイント
集客減をすべて追客で補おうとする。 自社に合う新規顧客が不足している場合は、商品や広告、商圏の見直しも必要です。現在の受注が維持できていても、将来の商談案件が減っていないか確認します。
自動配信を増やして対応済みにする。 送信数が増えても、質問への回答や個別相談につながらなければ工程は進みません。
来場数を増やすために顧客との適合を無視する。 施工エリアや予算が合わない来場ばかり増えると、営業工数が増える一方、提案につながりにくくなります。
成約件数だけを追い、値引きや費用を見落とす。 商品別の粗利、値引き額、運用費用まで確認し、改善後に利益が残るかを判断してください。
導入前チェックリスト
- [ ] 反響・予約・来場・成約の定義と集計期間をそろえている
- [ ] 重複反響と再来場を区別できる
- [ ] 初回対応の担当者・期限・代行者が決まっている
- [ ] 土地・予算・時期と、未確認の項目を記録できる
- [ ] 対応継続中の案件に次回アクションと期限がある
- [ ] 返信・予約・営業対応開始時に自動追客を停止できる
- [ ] 配信停止情報と顧客情報の閲覧権限を管理できる
- [ ] 追加費用を含めて成約単価・粗利への影響を評価できる
よくある質問
集客が減っていても、広告費を増やさなくてよいのでしょうか?
新規反響の不足が主因なら、広告投資も選択肢です。初動や来場率に課題がある場合は、その改善と並行して検討します。新規集客の追加費用と、既存反響の歩留まりを改善する費用を比較してください。
「集客減少企業の37.8%が受注を維持・増加」は、追客の効果を示していますか?
この調査だけでは判断できません。過去に獲得した顧客の成約や、企業ごとの商品・地域なども影響し得ます。追客の効果は、顧客の条件と追跡期間をそろえ、実施内容を記録して検証する必要があります。
営業担当者が少なくても取り組めますか?
まず「担当未設定」「期限超過」「次回予定なし」の確認から始められます。扱う項目を絞り、顧客情報の記録場所を統一してください。対応量が増えてきた段階で、通知や自動追客を組み合わせます。
PASSで支援できること
PASSの公式案内では、反響の受付、顧客状況に応じたステップ追客、反応に基づく営業への引継ぎ、返信・予約などに応じた配信停止、追客成果の可視化を紹介しています。pass.myhome-heroes.com
本記事の改善に当てはめると、次のような運用を支援する選択肢です。
- 流入元と顧客情報をまとめ、担当未設定や初動期限を確認する
- 検討状況に合う案内を継続し、反応があった理由を営業に伝える
- 自動追客と個別の営業対応を切り替える
- 反響から来場・成約までを確認し、改善する工程を決める
導入時は、現在利用している媒体や予約方法との連携範囲、停止条件が働くタイミング、担当者の入力負担を確認します。自社のデータと運用に合わせて設計し、効果測定から改善を続けます。
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